社会人になってからの学び直しとして税金のことを勉強したいけど、何を勉強すればいいのかを聞かれることがあります。ご自身で独立してビジネスをやっている方であれば、消費税を勉強してみることをおすすめしています。
リスクが大きいから
消費税の怖いところは、「事前の届け出が必要なものが多い」というところです。
消費税の計算方法には、大きく言うと「原則課税」と「簡易課税」の2種類があります(2割特例というものもありますが、今回は除外)。
文字通り、「原則課税」の方が原則的な処理で、計算が複雑(というか面倒)です。
一方、「簡易課税」の方が計算は簡単です。そして、業種にもよりますが、簡易課税の方が税金が安くなることもあります。
なので、基本的には簡易課税を選択することが多いです(ただし、売上が年間で5,000万円を超える会社は使えません)。
ですが、簡易課税を使うためには、「簡易課税を選択します」という届け出を税務署に提出する必要があります。しかも、届け出を出したらすぐに簡易課税ができるというわけでもありません。簡易課税にしたいと思う年度が始まる前に提出が必要です。
この提出が遅れると、原則課税で計算をしなければなりません。
逆に、原則課税の方が税金が安くなる、あるいは還付になるパターンもあります。
大きな設備を購入したりした場合は、原則課税にすると還付を受けられる可能性があるので、あえて簡易課税にせず、原則課税を選ぶということも考えられます。
もともと簡易課税で計算していた場合は、「簡易課税をやめます」という届け出を税務署に提出する必要があります。
そしてこれも、簡易課税をやめたいと思う年度の前の日までに提出する必要があります。
これをしていないと、簡易課税で計算しなければならず、受けられる還付も受けられなくなります。
このように、消費税は、1年後、2年後の業績や投資の計画を見越して、税務署に必要な届け出をする必要があります。
法人税や所得税の場合、今期は利益が出すぎるからという理由で、決算直前にたくさん経費を使って税額を抑えるという「対策」もできなくはありません(推奨はしませんが)。
しかし消費税の場合、決算直前での「対策」は難しいです。
税金の金額はダイレクトに資金繰りにも影響するので、事前にある程度の消費税の知識は持っておいた方が安全です。
利益がなくても払う可能性があるから
法人税や所得税の場合、利益が出ていなければ税金はゼロです。
なので、利益が出なければ税金の負担もありません。
(とはいえ税金を払っても利益はあるに越したことはありません)
ですが、消費税は、赤字なのに税金を払うこともあります。
コストの多くが人件費だったり、海外からの仕入れが多い場合、決算では赤字になっていたとしても、消費税はゼロにならず、むしろ税金を払わないといけないパターンもあります。
また、簡易課税を選択している場合には、利益が出ているかどうかは関係ないので、赤字でも税金がかかります。
法人税や所得税だと、赤字の場合には税金の計算を細かく考えることはなくなりますが、消費税ではそうはいかないところに注意が必要なので、勉強しておいたほうがいいです。
お客様への請求金額にも影響するから
消費税は売上の金額に上乗せしてお客様から請求します。
消費税の税率が変われば、お客様への請求金額にも影響が出ます。
税率は変わらなくても、インボイスの登録をしているかどうかによって、消費税を請求できるかどうかを相手先に確認が必要かもしれません。
消費税の納税義務があるかとか、インボイスに登録するかどうかの影響が自社の中だけにしか及ばなければいいですけど、社外のお客様や支払先への支払額にも影響する可能性があります。
自社あるいはお客様の資金繰りにも影響することですので、ある程度消費税の基礎的な知識はキャッチアップしてもいいかと思います。
小規模な会社やフリーランスであれば、今までは消費税のことはあまり考える必要はなかったかもしれません。
ですが、インボイス制度が始まって、少し風向きが変わりました。
インボイス制度が始まったからといって影響ない人もたくさんいますが、もし自分あるいは自社に影響しそうであるといった場合には、消費税について勉強してみるのもいいでしょう。
(私の方でも個別に相談は受け付けています)
▪️編集後記
昨日は午前中に税理士業の打ち合わせ。小冊子の発送。
午後は自宅で会計士業の作業。
生成AIでスライドを作ってくれる「Gamma」を契約し、試行錯誤中。