会社の資金調達の手段として、銀行借入などの「融資」と株式発行による「出資」の2種類がありますが、両者はにて非なるものです。出資は資金調達の手段だけではなく、仲間を集めるための手段としての性質も強いものです。
「他人」か「仲間」か
銀行融資などの借入金は、会計上「他人資本」といわれます。
「他人」とあるように、社外からの調達です。
一方、出資は「自己資本」といわれます。言葉のとおり、出資をしてくれた人は社外ではなく、「身内」、「仲間」という意味合いが強いです。
自己資本比率が高い会社は財務の健全性が高いと言われますが、これも「仲間が社内に多い」ということの信頼の表れともいえるかもしれません。
逆にいうと、出資による「仲間」が増えると、簡単には縁を切れないという一面もあります。
融資であれば、相手は社外の銀行だったりするのである意味で気楽な部分もあります。一方、例えば学生時代の仲間が共同で出資して起業するというような場合、仲違いになって誰かが会社を辞めることになっても株を手放してくれない、といったトラブルはよく聞く話です。
出資による資金調達は、お金の面だけで見れば返済義務がないとか利息の支払いがないとかのメリットがありますが、お金以外の人間関係が重要になってきます。
「お金を集める手段」か「仲間を集める手段」か
融資は会社のキャッシュを厚くするために行うものです。お金がなければ必要な投資もできませんし、事業のチャンスを逃すことにもなります。
出資も、資金調達の目的も当然にありますが、それよりも「仲間を集める」という側面が強いです。
融資だったら、銀行の担当者が人間的に合わないということがあっても、条件さえ良ければ融資を受けることもありますが、出資の場合、人間的に合わないとか、会社の成長に貢献してくれないということがあれば、いかに多くの資金を調達できそうでも、成長にはつながらない可能性があります。
「仲間を集める」という側面が強いので、「誰に株を何株、ストックオプションを何個付与するか」といった資本政策も非常に重要になります。
起業してすぐのときは、出資してくれる人のことを信頼してろくな契約もせずに株を発行し、後になって経営に過度に口を出してきたり、縁を切ろうと思っても株を戻してくれないというトラブルも起こり得ます。
そういったことを事前に回避するためにも、資本政策や株式引受の契約はしっかり検討する必要があります。
「お金を出す人」の目的
視点を変えて、お金を出してくれる人の目的にも、融資と出資とでは違いがあります。
融資の場合、資金を貸出してくれる銀行などの目的は、貸した金を返してくれることと利息収入です。
もちろん会社を応援したいとか、地域経済への貢献という目的もあると思いますが、銀行である以上、利息と元金を返済してもらうことが目的です。
一方、出資の場合、出資者によって目的はさまざまです。
ベンチャーキャピタルやエンジェルであればIPOやM&Aといったexitが目的でしょうし、創業者のグループであれば経営権を維持しておきたいでしょう。
出資による資金調達は、融資以上に、「カネ」だけでなく、「ヒト」の部分、「夢」や「ミッション」にも魅力を持つようにすることが必要になります。
融資も出資も、同じファイナンスという手段ではありますが、アプローチはにて非なるものがありますので、会社の進みたい方向性によってどちらを重視するかを考える必要があるでしょう。
とはいうものの、ベンチャーでどんどん事業を拡大していきたいとかでなければ、出資はあまり選択肢にはならないでしょうね。
私自身もそうですが、人を雇うことを前提としない「ひとり社長」という生き方もあります。
そういう会社の場合には、出資は利害関係者が増えて疲弊することもあるので、資金調達の手段としては融資が現実的です。
出資はロマンもありますが、まずはしっかり融資で銀行との信頼関係を築き、資金繰りを固めることをおすすめします。
▪️編集後記
昨日は経理支援業務を自宅で作業。
その後、歯医者で治療、移住支援金の手続きなど。
6月に(AppleのM3チップを超えると話題の)新しいWindowsPCが出るので、予約しました。Macがメインではありますけど、銀行の電子証明とか専用ソフトとかがあり、Windowsも完全には切れないんですよね。