不動産投資の確定申告をするにあたって注意すべき点として、不動産投資が赤字の場合に、ローンの利息を経費から除外するという特例があります。
不動産投資で経費になるものとならないもの
多くの書籍やサイトでも説明がありますが、以下のようなものは経費になります。
- 不動産がある現地に行くまでの交通費
- 不動産を取得するための登記費用やローン事務手数料
- 建物の減価償却費
- 勉強のための書籍・セミナー費用
基本的にはその不動産投資をするためにかかった費用は、経費になりますし、逆に不動産投資には関係ないような飲食代、旅行費用などは経費にはなりません。
また、ローンで購入した場合の利息も経費になります。
ですが、不動産投資の収支が赤字の場合、特例があり、一部は経費から除外する必要があります。
土地の取得に係るローンの利息は要注意
土地と建物をまとめてローンで購入して、その不動産投資の収支が赤字になった場合、土地の取得のために要したローンの利息は、経費から除外する必要があります。
例えば、
不動産投資の収支:▲100万円
ローン返済の利息:40万円(そのうち土地の取得に係る部分が30万円)
不動産所得:▲70万円
となります。
赤字の幅が小さくなるので、損益通算できる金額が小さくなり、節税金額も小さくなります。
また、以下のようなケースだと、不動産投資の収支はゼロになります。
不動産投資の収支:▲10万円
ローン返済の利息:40万円(そのうち土地の取得に係る部分が30万円)
不動産所得:0
となり、赤字がなくなります。
不動産投資の収支が黒字であれば、上記のような特例はなく、全ての利息を経費にすることができますが、赤字の場合には注意が必要です。
あまり理論的な処理ではありません。バブル期の土地が高騰していたときに、都心の土地の価値が高い物件を購入して赤字にして還付を受け、さらに土地の価格が上がったタイミングで売却すれば、還付と売却益の両方を得られるというスキームを防止するための規定とのことです。
理論的ではないとはいえ法律なので従わなければなりません。
都心の築古物件の投資の場合、土地の価格が高いことが多いので、利息の大半が経費にならないということが起こりえます。都心の物件は賃貸需要が高いというメリットがある反面、節税という点ではデメリットがあります。
どこまで節税を狙うか
都心の築古物件は、上記のように利息の大半が経費にならない可能性があるという点があります。また、購入価格に占める建物の価格の割合も低い傾向にあるため、減価償却費も少ないです。
不動産投資の営業のうたい文句として、「節税になる」というメリットがいわれます。
減価償却費などを活用して収支を赤字にすれば、給与などの他の所得と通算して所得を圧縮し、税金を安くできるというものです。
しかし、上記のように都心の築古物件の場合、減価償却費も少ないですし、赤字の場合は土地の分の利息を経費にできなくなります。
本当に節税を狙いに行こうと思えば、できるだけ建物の割合が高くなるような物件(例えば地方の新築など)に投資をした方がいいでしょう。
しかし、不動産投資の成否は節税の大小だけではありません。最終的に、どれだけ手元にキャッシュが残るかです。
節税を狙って、需要のない地域の物件を買って空室がずっと続くようだと意味がありません。
賃貸需要だけを狙って、都心の新築物件を買って収支がずっと赤字でも意味がありません。
不動産投資のスタンスは人それぞれですが、私は、節税メリットは「二の次」と考えています。
それよりも、安定的に空室を避けて、大幅な黒字にはならなくても、赤字にはならない程度の収支になる物件を狙います。結果として節税になればそれに越したことはないという感じです。
税法には安易な節税(あるいは悪質な脱税)を防止するために、しばしば理論的ではない規定もありますが、その規定に踊らされず、投資の原則(投資した以上のキャッシュを得る)に基づいて投資物件の選択を心がけるべきでしょう。