補助科目を使うべきか問題。原則は使わなくていい

経理や簿記の教科書に必ず出てくるのが、「補助科目」といわれるものです。私は基本的に使いません。でも、使ったほうが便利になることも否定できません。

目次

経理に必要なのは、「鳥の眼」と「虫の眼」

経理の目的は、過去の業績を正確に把握し、将来の経営に役立てることです。
税金を計算するためとか、銀行や株主に報告することも経理の目的ではありますが、それも含めて、会社が生き残るための指針を提供することが「経理」の役割です。

経理を経営に役立てるためには分析が必要ですが、分析には「鳥の眼」と「虫の眼」が必要です。

「鳥の眼」とは、全体を俯瞰し、自社だけでなく業界や社会という枠から自社の状況を見つめる視点を持つことです。
「虫の眼」とは、複眼を持つ虫のように、多角的な視点から情報を見つめることです。

全体からトップダウン的に情報を見る「鳥の眼」と、一つの情報を掘り下げていってあらゆる視点から情報を見る「虫の眼」の両方の視点を持つことが、経理の情報を分析し、経営に役立てるために必要です。

「鳥の眼」の分析としては、月次推移、お金の残高のチェック、決算予測などがあります。
「お金がどれぐらいあって、それは去年に比べて増えているのか減っているのか、また、将来はどうなるのか」を全体的な視点から確認していきます。

「虫の眼」の分析には、もう少し細かい情報を経理のときにインプットする必要があります。
その手段の一つとして、「補助科目」というものがあります。

「虫の眼」になるための補助科目・タグ

「補助科目」とは、文字通り経理で使う科目を補助するもの。
BSの「普通預金」の金額を見れば、会社にいくら普通預金の残高があるかはわかります。しかし、「普通預金」の内訳がいくらなのかも当然知りたい情報です。

なので、経理では勘定科目に「普通預金」、補助科目として「A銀行」、「B銀行」というように、口座別に補助科目を設定することがあります。

あるいは、月末に払う予定がある経費について、BSの「未払金」という勘定科目に、取引先ごとの補助科目をつけることで、支払い予定の管理を行うことができます。

内訳がわかるように補助科目を設定すれば、分析の精度も上がります。資金繰りにも活用できます。

このようなメリットもあるので、簿記を勉強すると必ず補助科目が出てきます。経理の実務でも、補助科目を設定することが多いです。
(会計ソフトのfreeeには、「補助科目」はなく、代わりに「タグ」というものがありますが、実質同じです。)

ただし、デメリットもあります。必ずしも教科書どおりに補助科目を使う必要はありません。

基本は使わなくていい。支払先が多いなら使ってもいい

補助科目を細かく使いすぎると、管理に手間がかかります。

  • 全体の合計額の残高は合っているのに、補助科目ごとの内訳が入り繰りになっていたり。
  • 同じ取引先なのに、誤って二重に補助科目を登録してしまって、名寄せが必要になったり。

経理の専門スタッフがいて、きっちりと時間をかけて管理できる人がいればいいですが、社長がひとりで経理をしているというような場合、そこまで細かく管理することは難しいこともあります。

このような場合、補助科目は使う必要はありません。
経費の支払先が毎月数十件あり、取引先ごとの支払い金額を経理上確認したい場合に、補助科目を利用することもアリです。しかし、経費の支払いがクレカだったり口座振替で振り込みをする必要がない場合などであれば、細かく会計ソフト上で管理する必要もないでしょう。

補助科目を使うより、独立した科目を作ってしまったほうがいいこともあります。

例えば、「預り金」という科目があります。
従業員に給料を支払うとき、給料から源泉所得税や社会保険料を天引きしますが、この天引きした源泉所得税や社会保険料は、経理上「預り金」にする必要があります。

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同じ「預り金」という科目を使いますが、支払いの時期はそれぞれ違うので、経理上は分けて管理しておいたほうがいいです。
なので、通常は「預り金」の補助科目に、「源泉所得税」や「社会保険料」を設定します。

ですが、わざわざ補助科目を使うと、経理で入力する情報が増えるので、それぞれ別の科目を設定して経理することもできます。

補助科目は経理の実務では当たり前に使われるものですが、原則使わなくてもいいでしょう。
それよりも、多少粗くてもいいので、毎日経理をすることの方が重要です。
「毎日、ちょっとだけでもやる」というのが、経理では一番大事なことです。



▪️編集後記
昨日は税理士業で月次のチェックなど。その後、Kindle執筆。
お盆ですね。私は関係なくいつもと変わらず仕事していますが、この時期にゆっくり休むのもありだと思います。
多くの場合、休まなさすぎですし。

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