AIの発達で人間の仕事は奪われるのか。仕事がなくなることもあるかもしれませんが、むしろ、仕事が増えすぎてお金は増えない状況にもなりえるのではないかと思います。
AIに人間の仕事は奪われるのか?むしろ逆では?
AIの進化によって人間の仕事がなくなるというより、むしろ人間が、AIじゃなくでもできるような仕事を低い賃金でやることになるのではないかと思ったりします。これはこれで怖いことです。
会計士は独占業務で会計監査をしていますが、監査の仕事にもAIの導入が進められています。
トーマツ、AIで不正会計を検知 300社の財務データ学習vv
もし今後さらにAIが進化し、監査が完全に自動化されたら、人間の会計士は不要になるのでしょうか。
おそらくならないでしょう。
監査クライアントから資料を取り寄せたり、社長や取締役にヒアリングをしたり、残高確認状を紙で発送&回収したりといった作業は引き続き人間が行うことになるでしょう。監査をする上で必要なインプットにおいては、人間が必要になる場面もあります。
しかし、監査のAIがものすごく進化して、それ以外のことは全部AIでできてしまう場合、人間はただAIに情報をインプットするための窓口になることはあるかもしれません。
そうなると、人間の仕事自体はなくならなくても、単価はものすごく下がると思います。
監査の仕事は、会社を取り巻く顕在的・潜在的なリスクを把握し、決算資料を分析し、会社の業務フローを把握して、どこに不正や誤りがないかをチェックしていく仕事ですが、そういった監査のコア部分はAIが行い、人間の会計士はひたすら資料を集めてくるという若手がやるような作業をずっとやる羽目になるかもしれません。
これだと、仕事は奪われるどころかむしろ増えていって、でも収入は一向に増えないというような状況になりえます。
私たちが恐れるべきは、自分の仕事を奪われてゼロになることより、自分の仕事の価値が下がっていくことではないかと思います。
機械でもできることを人間が(低賃金で)やるようになった
以前の記事でも紹介した「暇と退屈の倫理学」の中では、製品の製造工程の機械化によって、機械が人間の仕事を奪うのではなく、人間が機械の代わりをすることになった現状を説明しています。
モデルチェンジが激しいから機械に設備投資できず、したがって機械にやらせればいいような仕事を人間にやらせなければならない。売れるか売れないかがわからない賭けを短期間で何度も強いられるから、安定して労働者を確保しておくことができない。したがって、労働者を企業に都合の良いように鍛え上げておくプロセスすらもはや成立しない。
かつてオフィス・オートメーションが現れたときには、機械が人間の雇用を奪うと恐れられた。しかしそれは杞憂に終わった。いまは人間が機械の代わりをしている。(P.159)
非正規雇用が増えたのは大企業が搾取をしているのではなく、過剰な消費社会の末路であるといいます。
そして、今度はAIにより、人間がAIの代わりになって安い仕事を引き受ける未来がすぐ近くに来ているかもしれません。
仕事を奪われることも怖いが、仕事が増えすぎるのも怖い
高度成長による消費社会の到来により、「機械が人間の仕事を奪う」のではなく「人間が機械の代わりをしている」ことは、AIの発達による私たちの将来の仕事のあり方を示唆しているように思えます。
AIが発達すると、AIが人間の仕事を奪うのではなく、AIでもできるようなこと(あるいはAIが苦手としている事務的な作業)を人間がやるようになり、それによって人間の労働はより低い価格で買いたたかれるかもしれません。
仕事はむしろ増えていき、働いても働いても生活は豊かにならないという状況にもなりかねません。
そうなる前に、今までの自分の経験やスキルだけに固執せず、「自分だからできること」を探し続ける必要があるかもしれません。