数年前に働き方改革がブームになり、残業をしない(できない)環境が進みました。残業をしないことは、仕事への負荷を減らすイメージがありますが、必ずしもそうではなく、むしろ短い時間で仕事をしなければならない大変さがあります。
デッドライン仕事術
少し前の本ですが、吉越浩一郎さんの「2分以内で仕事は決断しなさい」を読みました。この本の中で著者は「デッドライン仕事術」を提唱しています。これは、全ての仕事にデッドラインを設け、社員の残業は禁止するといったスピードを重視した仕事術です。
本の中では、残業をせず、仕事のスピードを上げることの考え方を紹介されています。
- 大きなプロジェクトも、細かいタスクに分解し、そのタスクを素早く処理する
- 能力を磨くだけでなく、スピード(効率)を上げる
- 全ての仕事にデッドラインを設ける
デッドライン仕事術は、「いつでもできる」という仕事をつくらず、初動をとにかく早くし、時間が経って問題が複雑化する前に仕事を完結させるものです。
20年ぐらい前の本ですが、現在でも、締め切り(「Due」という人も)は重要だと言われながらあいまいにしていることは多いと思います。「なるはやで」は今でも言われることは結構あるのではないでしょうか。
3つのデッドラインで、全力で仕事を終わらせる
本の中では、1日の中での3つのデッドラインを設けることを紹介しています。
- 毎朝8時30分の早朝会議
- 昼の「がんばるタイム」
- 残業禁止
「がんばるタイム」では、昼の12時30分から14時30分までの2時間は電話、打合せ、オフィス内を歩き回るのも禁止、机に張り付いて仕事に集中しなければなりません。
この「がんばるタイム」があることで、仕事のスピードがさらに上がります。
折り返しの電話を午後六時すぎにもらえたとしても、うちでは完全にアウト。六時半には全員が会社から締め出されるので、見積りの計算をする時間がない。残念ながら、次の日の朝の会議で私にケツを蹴っ飛ばされることになります。「がんばるタイム」のあとでは間に合わない可能性があるし、「がんばるタイム」中は電話ができない。そうなると、午前中に取引先に電話をするしかありません。「がんばるタイム」が真ん中にあることで、前倒しして仕事せざるを得なくなるのです。(P.80)
毎日残業をして夜遅くまで会社に居続けるのは、仕事が忙しいとか効率が悪いというのもあるかもしれませんが、定時で帰りたくても「周りの目が気になる」というのが大きいと思います。
毎日定時キッカリで帰ろうとして周りに変な目で見られるぐらいなら、残業しておいた方が気楽、でもその分日中の仕事はのんびりしてしまう、というのが残業がなくならない要因ではないかと思います。
本にあるように、残業禁止というデッドラインがあり、かつ翌朝には会議で報告しなければならないとなると、必然的に日中に集中して仕事をせざるを得ません。ダラダラと夜遅くまで期限のない仕事をしている方が、むしろ楽で、デッドラインを設けて日中に猛烈に集中して仕事をする方が、長時間労働ではなくても気力と体力を必要とするでしょう。
残業をしないことは、楽をすることではない
この本の出版当時とは違い、今は長時間労働に対する規制も厳しくなり、残業をしない(できない)会社は増えてきたと思います。
残業をしないと聞くと、仕事の負荷が減り、仕事が楽になる印象を持ってしまいます。しかし、残業しないという働き方は、従来の仕事を楽にすることではなく、従来の仕事とは違う考え方に切り替える必要があることだと思います。
- 午前中はまだ眠いからゆっくり仕事
- ランチ後はゆっくりコーヒー
- 期限が迫ったら残業を覚悟
こういった従来の仕事でよくある光景を、大きく方向転換する必要があります。
- 朝出社したらいきなり全力で仕事スタート
- ランチ後は「がんばるタイム」で仕事に没頭
- 残業はせず、夕方には帰る
ある程度社会人経験を重ねてくると、その人なりの仕事の仕方が身についてしまい、考え方を大きく変えることはむしろ大きな負担になるかもしれません。
残業できない分、日中に大きな負荷をかける必要がある以上、ダラダラ残業するより疲労度は大きいかもしれません。
残業しないことは、楽をすることではないということを「2分以内で仕事は決断しなさい」を読んで痛感しました。