「ザリガニの鳴くところ」あらすじを追うだけが読書ではない。

アメリカでベストセラーになり、日本でも本屋大賞などを受賞している「ザリガニの鳴くところ」が文庫化されたので、読んでみました。ストーリーの面白さだけでなく、自然や心情の描写を文字で表現する小説の楽しさを痛感しました。

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ベストセラーの文庫化「ザリガニの鳴くところ」

「ザリガニの鳴くところ」はアメリカの小説で、全米でベストセラーになり、日本でも本屋大賞の翻訳部門で賞をとっています。2022年に映画化もされています。

アメリカの湿地帯を舞台に殺人事件が起こり、誰が犯人なのかを巡るミステリーでもあり、家族に見放されて孤独に生きている少女の半生を描く大河小説でもあり、差別や貧困の実態を描く社会派の小説でもあります。

約600ページある長い小説ですが、2日で読みました。実家から東京に戻ってくる新幹線の約2時間、ずっと読んでいました。

もちろん面白いのですが、面白いだけでなく、読み終わった後に「んんん・・・」と唸ってしまうような読後感があります。

ミステリー小説でもあるので、最後には犯人がわかるのですが、真相がわかっても「あ~、そっか!すっきり!」という感じでもなく、かといって「なんだ、やっぱりそうか」と予想できたわけでもなく、妙な納得感はありながらも、「でもなんで?」と、読んだ後も考えてしまうような話です。

小説はいろんな読み方ができるものですよね。答えがはっきりわかる話はわかりやすくてその時は面白くても、読み終わったらその瞬間に内容を忘れてしまうことが多いです。数年したらほとんど内容を忘れてしまいます。

でも、この「ザリガニの鳴くところ」は数年経っても内容を忘れない気がします。

あらすじを追うだけでなく、文字による描写を楽しむ

「ザリガニの鳴くところ」は、自然の描写が細かいのが印象的です。文字を追っているだけでも、自然の豊かさが頭に浮かびます。

今はネットでどんな映像もすぐに見れます。それに引き換え、小説は文字だけです。挿絵もないですし、実際に湿地や海や樹木の様子を見ているわけではないのですが、それでも湿地のぬかるんだ印象や、鳥たちが飛ぶ様子が伝わってきます。

文章でこれだけ読者の頭に景色を思い浮かばせられるのってすごいですよね。自分の語彙力がなさ過ぎて「すごい」としかいえないのが悲しいですが。

あらすじを追う楽しさもありますが、こういった文章による描写を楽しむのが小説の良さでもあります。

人によって感想が違う。小説はそれが面白い

小説はビジネス書とかと違い、どう読むか・どう解釈するかに正解はありません。

むしろ、読んだ後にどう感じるかを楽しむのが小説の楽しみ方かもしれません。

登場人物の動きや考えを読んで、そこに自分の考えてることや経験してきたことと重ねて、共感するところがあれば「確かにそうだな」と感じ、理解できないところがあれば「何でそんな風に考えるのか」を考え、自分なりに答えを出してみる。

もちろん人によって答えは違うので感想も人それぞれですが、それが小説の面白さだと思います。

短くてわかりやすいYouTubeの動画を漁るのも良いですが、たまには文字だけの小説を楽しみたいものです。

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