消費税の申告と納付は、原則として年に1回ですが、これを3ヶ月に1回、あるいは1ヶ月に1回にすることができます。手間は増えますが、少しずつ納税ができる、還付を受けられる場合があるなど、メリットもあります。
消費税の課税期間の特例
消費税の税務申告には、「課税期間の特例」という制度があります。
これは、消費税の申告の対象期間(課税期間)を、通常1年のところ、3ヶ月や1ヶ月に短縮ができるというものです。
例えば会社の事業期間が4月1日から3月31日の場合、通常であれば、4月1日から3月31日までにかかった消費税を集計し、申告・納税が必要です。
「課税期間の特例」を使って3ヶ月に短縮した場合、
4月1日から6月30日
7月1日から9月30日
10月1日から12月31日
1月1日から3月31日
の4回に分けて消費税を申告・納税することができます。
この特例を使う主なメリットは、資金繰りです。
特例を使うメリットとデメリット
例えば1年間の売上が5,000万(消費税500万)、経費が3,000万(消費税300万)の場合、確定申告で納税が必要な消費税額は、500万円ー300万円=200万円です。
3月決算の場合、これを5月末までに納付する必要があります。
これだけのまとまった資金を用意することが難しい場面もあるかもしれません。
そこで、課税期間の特例を使います。
例えば、以下のような売上&経費の推移だった場合、消費税の納税額は以下のようになります。
売上(消費税) | 経費(消費税) | 納税額 | |
4月1日〜6月30日 | 2,000(200) | 800(80) | 120 |
7月1日〜9月30日 | 1,500(150) | 700(70) | 80 |
10月1日〜12月31日 | 1,000(100) | 1,200(120) | -20(還付) |
1月1日〜3月31日 | 500(50) | 300(30) | 20 |
年間合計 | 5,000(500) | 3,000(300) | 200 |
1年分をまとめると200万円のまとまった納税資金が必要ですが、課税期間を短縮することで、200万円を少しずつ分けて納税することができます。
また、場合によっては還付を受けることができます。
1年分まとまった資金を用意することが難しくても、課税期間を短縮することで少しずつ納税することができ、資金繰りも改善できる可能性があります。
上記の例は3ヶ月ごとに申告&納税ですが、もっと短く、1ヶ月ごとにすることもできます。
1ヶ月にすれば、さらに納税資金を分割で払うことができるかもしれません。
ただ、課税期間の短縮をすると、消費税の申告や納税を1年間で何回も行う必要があるので、手間はかかります。
また、一度課税期間を短縮すると、2年間は継続することが必要です。
3ヶ月に1回申告するのが面倒だから「やっぱりやーめた」と思っても、2年間はやめられません。
税理士は嫌がる?
多くの場合は消費税の申告は顧問税理士が担当すると思うので、申告の手間が増えるのは税理士になるでしょう。
資金繰りを良くするために、課税期間を短縮したいと言ったときに、税理士がどういう顔をするか。
普通のまともな税理士だったら、嫌がることはないでしょうね。普通に対応してくれると思います。
(嫌がられたら、その税理士との付き合いを考えてもいいかも)
ただ、税理士報酬に反映される可能性はあります。期間が3ヶ月に短くなっても、申告するときの作業量は1年分申告するときと大きく変わりません。1年だけやっていた消費税の申告作業が4回(or 12回)に増えるので、税理士にとっては作業量が純増します。
(私の事務所では、特に報酬に変動はありません)
料金がわかりづらい税理士も多いので、もし課税期間の特例を活用したい場合には、税理士に手続きだけでなく、費用面も確認するようにしましょう。
▪️編集後記
昨日は税理士業で打ち合わせ。Kindle執筆、名刺作成など。