何かを購入したり支払いをしたときに、「これは経費になる」と考えると、ちょっとお得な気分になるというか、「自腹ではない」という感覚になったりしないでしょうか。しかし、経費だからといって得になっているわけではありません。
「経費になる=節税」は、間違っていないが正しくもない
仕事の仲間や同僚との食事など、飲食代金を「交際費」として経費にすることはあるでしょう。
あるいは、どこかに旅行に行くとき、主な目的が仕事の出張で、ついでに現地で観光するという場合、それを「旅費交通費」として経費にすることはあるでしょう。
「経費になる」というと、「自腹ではない」という感覚があります。
独立前に会社に勤務していたのであれば、文字通り自腹ではなく、経費になるものは会社負担になります。
独立・起業すると感覚はわずかに変わるかもしれませんが、それでも何かを購入したり飲食に行ったりしたら、それを「経費にしたい」という気持ちになることはあるでしょう。
「経費にしたい」、「経費にしちゃえ」という気持ちになるのは、それが節税につながるからです。
言うまでもなく、経費が増えれば利益(所得)が減り、その分税金も少なくなります。
同じ支出をするなら、それを「仕事のために使った」ということにして経費にすれば、税金を安く抑えることができます。
しかし、当然のことながら、「経費になる」からといって、お得になるということではありません。
経費は、あくまで売上を上げるために使うものでです。結果として税金は安くなりますが、それを目的にするのは本末転倒ともいえます。
経費とは先行投資
取引先との会食や代金の支払いなどは、お客様との関係を深め、ひいては売上増加を目指すための先行投資と言えるでしょう。
多くの場合、投資なしに売上を上げることはできません。先に経費の支払いが伴うことがほとんどです。
経費とは先行投資であり、節税策の一つではありません。
生命保険や不動産投資のセールストークに、保険料の支払いや不動産の減価償却費を通して節税になることがよくうたわれます。
確かに生命保険が経費になることもありますし、不動産投資の減価償却費は所得を減らすので、税金は安くなります
しかし、だからといって、「経費になるから保険を契約する」とか、「節税になるから投資用にマンションを買う」というのは望ましいものではありません。
生命保険が経費になるのは、それが経営におけるリスクを未然に防ぐための支出だからです。
減価償却費によって節税になるのは、不動産投資の収支が赤字になって他の給与所得や他の事業の収入と相殺できるからで、いわば「投資が失敗している」からです。
節税を目的に経費を多めに上げたり、節税を目的とした投資商品を買っても、それで税金は安く済むかもしれませんが、会社にはお金が残らないこともあります。
税金にとらわれすぎてはいけない
税金は確かに影響の大きいものです。
法人であれば、利益の約3割、消費税を含めるとそれ以上の割合が税金となることもあります。
これは確かに痛手です。
会社の生き残りのためにあらゆることを考えて行動し、必要な投資で種まきをして売上を上げ、そこから人件費や家賃を支払い、そこから残った利益の半分が税金として持っていかれることに、不満というか痛手を感じるのは当然でしょう。
しかしながら、税金だけに固執すべきではありません。
事業においては、税金だけでなく、営業、マーケティング、製品開発などの活動があり、それぞれにコストがかかります。
税金だけを節約すれば良いというわけではなく、経費にして税金が安くなったとしても、経費としてコストを払ってキャッシュアウトしていることは変わりません。
経費はあくまで売上を上げるために支出したものなので、「経費にできるから契約しよう」というのは本末転倒です。
節税も大事ですし、適切な節税は経営者の義務であるともいえます。
しかし、その手段として必要ないものに経費を使うことは望ましいものではありません。
▪️編集後記
昨日は畿央大学が主催するベビークラスへ。何回か行っているので、他の子の成長も見ることができました。
午後は税理士業で7月納付の源泉税の集計など。
▪️娘日記(0歳)
ベビークラスでは参加者の親子が輪になって手遊びをしたり参加者同士で交流したりするのですが、娘はその輪の中で縦横無尽に動き回っていました。