損益分岐点売上って、理屈はわかりますけど実務では計算が難しいものです。固定費を把握することは大事ですが、変動費はあんまり気にしすぎない方がいいと思います。
固変分解が難しい
損益分岐点売上を出すには、固変分解が必要です。
固定費としては人件費、家賃などはイメージが付きやすいですが、水道光熱費とか通信費とか、利用量に応じて金額が変わるものもあります。
また、同じ勘定科目を使っていても、サブスクの取引だったら固定費ですし、それ以外は変動費です。それをいちいち細かく分けるのも骨が折れます。
Excelを使って最小自乗法で固変分解をするという方法もあります。
月次で売上とコストの金額を散布図に起こし、近似曲線をExcelに出してもらい、その一次関数から変動費率と固定費を出すというものです。
ですがこれも、会社によっては固定費がマイナスに出たりすることもあります。
簿記の教科書のようにはいかないものです。
なので、実務でやるとしたら、固定費か変動費か微妙なものは、ある程度「エイヤッ」で固定費か変動費に分類することになります。
そうなると実際出てくる損益分岐点売上が、実感とは違うものになったりして(良いことでもあるのですが)、「この科目は変動費にしちゃおう」みたいなかなり「属人的な」操作が入る可能性があります。
目的は「赤字にならないための売上を把握すること」なのに、固定費か変動費に分類することに時間をかけるのも、無駄にも思えます。
イメージがしづらい
簿記の教科書だと、損益分岐点売上と同時に「安全余裕率」という指標も出てきます。
私はこの「安全余裕率」がずっとよくわかりません。指標の意味はもちろんわかるのですが、「安全余裕」という言葉と「率」とが結びつかず、イメージできないので受験勉強をしていたときは数式の丸暗記で乗り切りました。
損益分岐点売上がわかると、「売上を●%下がると、営業利益が▲%下がる」という分析ができるようになります。
これも何かピンと来ません。いやまあ分かるんですけど、腹落ちしない感じがします。
限界利益とか貢献利益も、英語を訳したのかもしれませんが、言葉だけ聞いてもイメージできないですし、あんまり積極的に使おうとは思えません。
もっとシンプルに、「これだけの売上がないと赤字になる」というように分析するのがわかりやすいのではないかと思います。
「損益分岐点売上」よりも、「必要売上高」
人件費や家賃などの固定費(サブスクがあるようなものも保守的に固定費)から、キャッシュの流出がない減価償却費を引いたコストから、「必要売上高」を出す方が、シンプルではあります。
損益分岐点売上とも類似しますが、変動費率とか貢献利益率とかを考えなくていいので、個人的にはイメージしやすいです。
また、融資を受けている場合は、返済に必要な資金も合わせた「必要売上」を出しておくと、最低限必要な売上高が把握できます。
教科書に出てくる「CVP分析」のような分析手法はキレイに数字が出ますし、勉強する分には楽しいのですが、実務で使おうとすると複雑になりがちです。
誰でもイメージできて、使いやすいものでないと、実務での経営分析や管理会計は意味がありません。
▪️編集後記
昨日は経理支援業務で自宅作業。小冊子の作成など。
井ノ上さんのブログから当ブログにお越しいただいた方、はじめまして!
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