会計=簿記というイメージもありますが、簿記の知識は経理をするうえではマストではありません。でも、会計的な考えは経理では必要です。
freeeは「誰でも」使える?
「会計業務を、誰でも、流れるように。」
freee会計は「誰でも」経理業務ができることをウリにしています。
実際freeeは会計ソフトとしてはけっこう特殊です。それが「ダメ」とか「使いにくい」ということではなく、簿記の知識がなくても経理ができるように工夫されているということです。
(税理士や経理を長年やっている人にとっては使いにくいかもしれませんが、それはそれでいいことだと思います)
確かに、freeeをはじめとしたクラウド会計ソフトを使えば、簿記に詳しくなくても経理ができるようになっています。
でもそれは、簿記をベースにした会計の考え方を無視していいわけではありません。
経理をするのに「簿記検定」は不要ですが、「会計的な考え方」は必要です。
簿記は不要だが、会計は必要
例えば、「前払費用」という経理処理があります。
SaaSのような月額課金のサービスで、毎月支払いではなく1年分を一括払いする場合、一括払いした料金全額を費用にするのではなく、いったん「前払費用」という資産項目にして、毎月費用にしていく必要があります。
これを従来の簿記の形で表現すると、以下のようになります。
↑のように、「前払費用」という勘定科目を、借方(左)あるいは貸方(右)に記録していく必要があります。
これを、freeeを使うと、以下の画面から処理ができます。
いったん前払費用という支出の登録をして、「更新」というボタンをクリックします。
すると、↑のような残高を更新する画面が出てくるので、ここで「支払手数料」という科目と金額を入力すると、前払費用の取り崩しができるようになります。
従来の簿記の方法だったら、簿記の知識がないと経理するのは難しいでしょう。
「前払費用」は「資産」だから、取り崩しをするなら「資産の減少」である「貸方」に「前払費用」を計上して、相手勘定は「費用の増加」として「借方」に費用を計上するということを知識として知っている必要があります。
(実務でどこまで厳密にやるかはケースバイケースですが)
これが、freeeだったら借方とか貸方を知ってる必要はありません。そういう意味では、「誰でも」経理ができるということになるかもしれません。
逆に、税理士とか経理を長年やってる人からすると、この辺がfreeeの操作に違和感を覚えるところです。長年の感覚が染み付いていて、借方・貸方を使わない経理なんてやったことないので、freeeを苦手にしている税理士もいます。
このように、freeeを使えば「前払費用を取り崩す処理方法」は簡単にできます。
しかし、そもそも「一括払いをしたら前払費用を計上し、それを毎月費用にして取り崩す」という会計的な考え方を知ってないと、「前払費用」なんて科目を使うことすら考えないでしょう。
クラウド会計を使うことで、手段としての簿記的な処理は簡単にできるようになりましたが、正しい業績を示すという目的においては、クラウド会計ソフトを導入するだけで解決するわけではありません。
簿記=プログラミングみたいなもの
ITに詳しくなりたいからといって、プログラミングが必須なわけではありません。
ChatGPTを使いこなしたいからといって、大規模言語モデルの仕組みから勉強する必要はないです。
もちろんプログラミングが出来たほうが応用が利くし、ITを専門に仕事をしていくなら、プログラミングが出来たほうがいいですが、そうでないなら必須というわけではありません。
それよりも、ChatGPTでは何が得意なのか、プログラミングで効率化できる作業はどんなものなのかを知っていることの方が重要です。
簿記も同じで、詳しい方が経理をするうえでは便利ですが、詳しくなくても経理はできます。
でも、簿記的な考え方(取引には2面性がある、フロー情報とストック情報の2種類があること)については、ある程度押さえておいた方が経理では役立ちます。
細かい処理は税理士などに依頼するとして、この取引はどのように決算書に反映されるべきなのかという点については、書店やセミナーで身につけておいたほうが、ひとりで経理もしやすくなるのではないかと思います。
▪️編集後記
昨日は「良習慣塾」のセミナー受講。いつもボリュームたっぷりで刺激になります。
午後は交流会のイベントに参加。奈良の元興寺(今年2回目)や奈良ホテルに行きました。奈良ホテルは家から近いので泊まったことはないですけど、一度は泊まってみたいとは思います。