経理の仕事をしていて、インボイス制度のことをいろいろ調べていました。10月の適用開始直前であるにもかかわらず、未だに賛否の声は多々あり、例外規定なんかもいろいろ出ています。結局どういう対応が必要なのか、フリーランスや経理担当者は何をしなければならないのか、改めて考えました。
複雑で例外が多いインボイス制度
インボイス制度の概要を説明している記事は数多いので、詳細は省きます。
- 事業者が請求書を発行するときに、一定の要件を満たした請求書(インボイス)を発行することが必要
- インボイスではない請求書を受け取った場合、買い手は取引先に支払った消費税分を「消費税申告」上の費用にできない(その分納税が多くなる)
- 売り手は1年間の売上が1,000万円以下であっても、消費税の申告・納税をするか、請求額に消費税を上乗せしないかのどちらかの対応が必要になる
ざっくり言うと上記のようなイメージでしょうか。
これに加えて、いろいろと例外規定や経過措置もあります。
- 免税事業者がインボイス登録をして課税事業者になっても、いわゆる2年縛り(2年間は課税事業者を継続しなければならない)は適用されない
- 消費税の計算を簡易的に計算(売上の20%=納税)できる(2026年まで)
- インボイスではない請求書でも、取引先に支払った消費税の80%までは消費税申告上の費用にできる(2026年まで。2029年までは50%まで費用にできる)
- 売上が1億円以下の場合、1万円未満の費用についてはインボイス不要(2029年まで)
なかなか複雑ですね。例外規定もいろいろあれば、当面の間の経過措置もあり、その経過措置も2026年までだったり、2029年までだったり、覚えていられるか自信がありません。
今はまだ制度の適用直前ということで、業界内では話題になっていますが、数年もすれば話題にもならなくなるでしょうし、フリーランスの人とか税理士さんは大変でしょうね。
会社によってインボイス制度の対応はバラバラ
経理担当者としてもどういう対応をしていけばいいのか、手探りのところが多いと思います。書籍や国税庁のサイトを見れば制度の概要は記載されていますが、実務上の細かい論点でどう対応すべきかまでは明記されていません。
- 取引先が免税事業者だった場合、取引を継続するのか(免税事業者であることを理由に取引の中止はできないとは言われてますが)
- 取引先のインボイスの番号が本物かどうかをどこまで調べつくすのか
- 原則的な消費税計算をするのか、簡易計算をするのか(簡易計算にも2種類ある)
経理担当者も、10月に向けてどう対応していくのか、他社の動向を伺いながら対応していく感じではないでしょうか。
インボイス制度の影響は大きい。では、どこまで勉強していくか
インボイス制度の適用による影響は大きいと思います。特に、フリーランスなどの中小事業者にとっては消費税の申告や経理処理の負担も増え、納税もするとなれば資金繰りの負担も大きくなります。
企業の経理担当者にとっても、取引先との取引継続のルール決めなど、社内でコンセンサスを取るための対応に追われていると思います(私もそうでした)。
とはいえ、税法の対応はインボイス制度が全てではありません。
フリーランスも経理担当者も税理士さんも、他に検討すべき会計・税務の論点は数多くあります。
インボイス制度の対応は重要ではあるものの、それだけの対応にとらわれていては木を見て森を見ず、他の論点で取りこぼしをしてしまうかもしれません。
最低限各社で対応が必要なことは国税庁のホームページや書籍で確認しつつも、他のもっと生産的なことの勉強に時間を使った方が良いのではないかと思います。